2012/01/25

名は中道慶謙と申す

うちへやってきた学生さんは、16歳の1年生でした。
とても大人っぽい雰囲気なので16歳には見えないほどなんですが、道に迷ったり
アクエリアス2リットル買ってくるあたりは、ほんとにあどけない少年です。(笑)

まずひと通り、機材の説明をして、操作を教えて、パソコンを明け渡してみました。
私にとっても初めての経験です。
思えばこれまで、シーケンサーの使い方や音楽の創り方を誰かに指導したことなんてなかった。
誰かが真剣に作曲している様子を目にすることもなかったんですね。
最初は操作性に戸惑っていましたが、さすが現代っ子です。
しかも工業系の高専の生徒さんなので、パソコンに強い。
部活も現代音楽部に所属しているそうで音響機器にも強い。

けっきょくその日は、8時間近くうちで粘り、半分ほど曲を完成させました。
もちろん音楽的にはまだまだなんですが、私にとっては目からうろこな発見でした。
こんなリズムを創るの? え?いきなりテンポチェンジ? みたいな。(笑)
ギタリストなので、楽なギターに逃げるかと思いきや、ちゃんとキーボードも使いこなしていて、
音楽を1から組み立てる勘を持っている。
途中から私は、一切口を挟まず、質問されるまで放置で見守っていたのですが(笑)
人が曲創りしている様子を垣間見ながら「あ、今フレーズ来たな」とか
「ほほぅ、こう来たか」などと感じ入った機会は初めてでした。本当に新鮮な体験でした。


そういえば、やってきてすぐに私は
「よくここまで来たねぇ~」と声をかけたのですが、その言葉に彼は間髪入れず
「こんなチャンスないじゃないですか!」と答えた。


私は16歳の頃の自分を思い出していた。
そう、私もそうだった。高1のとき両親に頼み込んで一人旅で東京へ来たとき、
無鉄砲にも当時大ファンだった山下達郎さんのレーベル(RCAレコードのairレーベル)を訪ね、
「音楽の仕事がしたいんです!どうしたらなれますか?」と訴えて回ったことがあった。(笑)
その時、まわりにいたおじさんたちは「ん~、達郎さん、ここには来ないよ?」とか
「そう言われてもねぇ・・(苦笑)」みたいな、曖昧な返事をされたのだけど、
ひとりの女性スタッフさんが帰り際にこそっと
「毎日訪ねてきたら、そのうちみんな折れるよ。がんばって。」と言ってくれた。
沖縄に帰って、毎日通うことは叶わなかったけど、その言葉は決して忘れられないものになった。

彼が放った「こんなチャンスないじゃないですか!」という言葉は、
すっかり私の胸を打っていた。
この人は私にチャンスを求めてやってきてくれたんだ・・・


2日目も午後から来てひき続きトライし、ひと通り欲しい音源などをチェックして
日が暮れる頃には作業を終えたのですが、なかなか大阪へ帰る踏ん切りがつかず
名残りおしそうにしてたので、3時間ほどお菓子を食べながら(笑)おしゃべりしてみました。
そこで彼のことがいろいろとわかった。


名前は中道慶謙(なかみちよしあき)。

将来の目標、家族や友達について。
ギターを始めたのはほんの4ヶ月程前。(笑)
子犬が生まれたことを嬉しそうに語り、写真を見せてくれた。
海外へ行きたいという想い、好きなギターについて。
次に欲しいギターだと言ってPRSの写真を見せてくれた。
バンドで経理を担当していることや、彼のリーダーシップ、世渡りのうまさは
目を見張るものがある。
私が何かを褒めれば、嬉しそうに照れながら、家族や友達を褒める謙虚さ。
一昨年のジュノン・スーパーボーイ・コンテストでトップ30人に残ったという抜群のルックスながら、
鼻にかけたところがまるでない。

そしてギターを宝物のように大切にしている姿に、私はひさびさに熱い音楽が自分の身体にも流れるような感動を覚えていました。


つづく・・・