『アブダクション』が誕生するまで
siteTINGARAで父の著書『アブダクション』を宣伝しちゃいました。(*^^*)
実は私も、つい先日の帰省中に父の病室で読みました。
読む前には"難解な論理学の本"という先入観があったため「私がこの本を最後まで読めたら奇跡だな」なーんて思っていたのですが、意外や意外、とても面白いのでした。
もちろんパース以外の学者さんの意見と比較したり、というあたりは、論理学についてまったく無知な私には眠くなるポイントだったのですが(笑)、第2章の終わりあたりからのアブダクションについての解説の部分は、まさに「アブダクティブな示唆は閃光のように現われる」の言葉の如く、宝物を発見したような期待感があるのです。
いったいシロートの私が何に興奮したのか、それはそのうち熟慮を重ねて語るとして(笑)、
この本が完成して無事出版を迎えるまでの壮絶な日々について、記しておきたいと思います。
父は何年も前から「次は科学的発見の論理について書くんだ」と語っていました。
父がこの本を完成させたのは、今年の4月のことでした。
3月に完成まであと1歩のところで入院することになってしまい、病室ではいつも書きかけの原稿の事を気にして、4月7日の一時退院の日に猛烈な勢いで最終章を書き上げ、その後自宅で療養中に前書きを書き終えて、全原稿が完成しました。
5月には薬の副作用からみるみる食欲が衰え、わずか10日ほどで体重が6kgも落ちてしまい、家族の支えなしでは歩けないほどの体力になっていました。それでも頑固者の父は入院を嫌って、投薬と通院を必死でこなしながら『アブダクション』の出版準備を進めておりました。
前作の『パースの記号学』の出版社である勁草書房さんが快く快諾してくださったので、出版についてはスムーズだったのですが、7月中旬、とうとう入院を逃れられないほど身体が悲鳴をあげてしまいました。
食事は経管栄養となり、歩行も困難で寝たきりの状態となり、極めつけはあれほど「この本を完成させるまでは死ねない」と言い続けてきた父が、極度のウツのため著書への熱意すら破壊されてしまい、残された校正や索引の製作などの仕事をこなすことが出来ず、急きょ琉球大学での教え子でもある浜崎先生と久高先生に助けを求めて出版に間に合わせました。
8月下旬、多剤耐性菌であったことが判明した肺外結核の治療のため沖縄で唯一専門の設備を持つ大学病院へ転院し、徐々に精神面も回復し、9月20日の出版日には念願の『アブダクション』を手にして感激の涙を流しました。浜崎先生と久高先生に父が直接、心からの感謝を伝えられたのも、先生方との面会が可能になったこの頃でした。
しかし肝心な耐性菌との闘いはすぐには始められず、薬の感受性テストの結果を待って10月19日から始まりました。それらの抗生剤は菌に対して明らかな威力を発揮しているのですが、同時にさまさまな試練を父に与えています。聴力は衰え、精神症状が悪化し、血中カルシウム値の増加、錠剤の誤嚥による炎症、そして12月に入ってからはDICという重篤な合併症まで引き起こしました。
それでも主治医の迅速な対応で窮地を脱し、看護士の方たちが誠意ある看護をしてくれて、父は強運と並外れた生命力に恵まれて、まだこの世にいます。
私は父がDICから回復し、全身症状が落ち着きを取り戻し始めた12月10日から『アブダクション』を読み始めました。父はDICで受けた治療の恐怖が限界を超えていたのか、精神症状はピークに達していました。
難解すぎて私にはムリだろうと思って前書き以外読んでいなかった(!)この本を奇跡的に読めたら、どうか父も奇跡的に回復させてください・・・なんて思いながら父の傍で読み進めたら、思いのほか楽に読めた。でも読み始めた瞬間、戦慄が走りました。これほどの本を書いた著者と目の前に居る父は・・・わずか半年前までこんな作品を書いていた人が・・・。
泣けて泣けてたまらなかったのですが、読み進めると『アブダクション』には快感とも呼べるほど示唆的な言葉が散りばめられていました。
「オーケストラの種々の楽器から発するさまざまの音が耳を打つと、その結果、楽器の音
そのものとはまったく違うある種の音楽的情態が生ずる。この情態は本質的に仮説的推論
と同じ性格のものであり、すべての仮説的推論はこの種の情態の形成を含んでいる」(P96)
まさしく。アブダクションで例えるなら、私たち音楽家はアブダクティブな示唆がほのめかすあの情態を求めて、さまざまな楽器を掛け合い、試行錯誤するのである。その探求の結果、あの得も言われぬ感動が姿を現すのだ。
TINGARAの音楽を流しながら、夜遅くまで病室で読み続けた5日間。
傍らにいる父には、私がこれを読んでいることを伝えることができませんでした。
父の心にはもう届きませんでした。
でも、共に過ごしたこの半年余りの日々に繋いだ確かな絆がある。
父のさまざまな言葉が蘇ってきました。
いつの日か父が本来の自我を取り戻せるまで、たくさん質問したいことを封印しておこうと思います。




16 COMMENTS:
つぐみに読めたんだから、ひでおしゃんにも読めるかも・・・
ぶはは。
今、AMAZONのボタンをポチってしました。
おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。ひでおしゃんっ
買ってくださったのですか!?
ひでおさんの分、取ってあったにょに。
でもありがと。ありがと。(T T)
大変ご無沙汰しております!
「ひでおちゃんねる」は拝見していましたが、
「つぐみんぐ」は多分初めてです!
アダプションなんか面白そうですね!!
買います!!!
これからも応援しておりま〜す☆
ryoさん
つぐみんぐへようこそです!
どうぞどうぞ梅昆布茶など。ずずず。
長文読んでくれたんですね。ありがとうね。
明るいメッセージ、嬉しいで~す☆
私のこの頭で理解できるかどうかは大変疑問だけど・・・
でも読んでみます^0^
アマゾンにポチっ*してきます。
昨晩、新橋の裏なんくるないさで飲んだくれ、
家に戻ってきたのがほとんど1時。
そんでもって、PCを開くのが面倒だったので、
布団の中で携帯からあちこちのサイトにアクセス。
site TINGARAのtsugumiさんのエントリーに、
お父様の新しい本のことが書かれていて、
速攻で、amazonに入り、迷うこと無しに、ぽちっ。
今晩には、自宅に本が届きます。年末、のんびり読んでみます。
実は、パースの記号学は、まだ読み終わっていないのですよ・・・、ちと難しいので(笑)
「オーストラリアの…」の文を読んでいて、ガイア6番を思い出しました。
つぐみさんの曲が生まれる原点に触れられるかも…面白そうです。ポチします。
お父さんの耳に読者の皆さんの声が届きますように、お祈りしています。
何かコメントしたいと思いつつも、あまりにも深刻な介護の様子が浮かんで言葉が出ません。 自分にできることはお父さまの回復をお祈りすることだけです。うちの父も12月4日に倒れて、13日に手術を受けました。パーティーに参加できなかったのは、このためでした。外傷性のものだったので、たった7日間の入院でしたが家族が一人いないことの重みを知りました。
お父様の本、読ませていただきます。
うーん!読んでみたくなりました!
お父様が早く良くなられますように。。
そしていーっぱい質問しちゃえるといいですね。
ちゅらさん
きゃ~ちゅらさんまで!ありがとう~☆
しかし、アマゾンボタンがこんなに効果あるとは。
付けてくれたひでおさんにもありがとう~☆(*^^*)
まっちゃん
おぉ。ありがとうございます~。実はまっちゃんは買ってくれるんじゃないかと期待してました。(^O^)
だいじょ~ぶ。『パースの記号学』よりは多少読みやすいと思います。私もアレはまだぜんぶ読んでないので。(^^ヾ
jun姫さん
ありがとうございます!祈りが通じて回復した時、きっと父はびっくりするはず。こんなにみんなが『アブダクション』に興味を持ってくれたって。
かわむつさん
ありがとうございます!同世代ですから、かわむつさんのご両親もきっとうちの両親と同世代ですね。
お父様の回復をお祈りしますね。介護世代、お互いがんばりましょうね。
やっしーさん
うんうん。ありがとう!
あれを読むと、父と話しとけばよかったーと思うことがいっぱいあるの。
冬休み中に読む本、としました!
さて、これからAMAZONへ行って来ます。
論理学という言葉には、20年ぶりに出合いました。ほとんど心理学と数学の間のような学問に四苦八苦したような気がします。
あまりにも壮絶な内容なので、携帯で読んだ後、PCでもう一回読みなおしました。
わたしも、かけるコメントがないなぁと思っておりましたが、
P96の引用の中で、
「情態」であって、「状態」でないことに気づき、感性的だなぁと感心しております。
そして、ただただ、回復される事を祈っています。
おおはらさん
おぉ!ありがとうございます。
私も年越しの頃もう一回読もうと思ってます♪
ざぶんさん
論理学を学ばれていたのですね!
お気遣いありがとうございますね。
私も重い内容だからもっとコメント少ないだろうと思ってたんですけど、みなさんが思いのほかこの本に興味を持ってくれて、とても嬉しいです。(*^^*)
つぐみさん、こんばんは。
つぐみさんのブログを拝見し、この半年以上の日々が、壮絶な状態だったことを知り、つくづく我が母の状態と重なり、涙が出そうになりました。と同時にものすごい生命力をもったつぐみさんのお父様、我が母親に生命の不思議や尊さを感じざるを得ません。
母は全く知的分野とは関係なく、残すものも何もないのですが、唯一、カメラが大好きで、たくさんの愛犬の写真・孫(私にとって甥っこ)達の写真が数百枚以上あります。
お陰で、犬までカメラ目線はばっちりで微笑む犬までいるんですよ^_^;
まぁ、来年以降どうなるかわかりませんが母が生きていることが今の私にとっては大きな支えになっていることは間違いありません。つぐみさんのブログを頼りに私も介護がんばります!
来年もよろしくお願いしますm(__)m
ゆったさん、こんにちは!
お母様はカメラがお好きなんですね。犬たちまでカメラ目線ばっちりに手なずけてしまうとは。(^O^)
お母様の毎日が幸せでありますことを祈りますね。
お互いがんばりましょうね。
ひでおちゃんねるでお父様の本を知り
こちらに飛んできました。
「つぐみんぐ」初めての訪問ですが、ベッドの横で本を読みながら半年前にこの本を書いた著者が傍にいる父なのかと思うと涙がとまらない・・・という行でもらい泣きしました。
完読したつぐみさんとお父様との絆を祈っています。
2008年が広がりのある良い年になりますように。。。
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