かむながらへの旅 第2夜『2003年は宇宙元年になる!』
「つぐみさんはどうしてジュピターに詞を書いたんですか?」
今年の初め頃、ある方からそんな質問を受けて、あまりに意外な質問に、ぼんやりと8年前に『みるやかなや』に託していた願いを思い出していました。
『JUPITER-水と光の奇跡-』は、昨年の4月にリリースした『かむながら』の収録曲。
ご存知イギリスの作曲家、グスターヴ・ホルストの有名な組曲『惑星』の中の一章です。
私はその質問を受けるまで、この曲に詞をつけたという印象を持っていなかった。
あくまでも楽曲として捉えていて、なぜ『JUPITER』であるべきか、そればかりに意識を置いていたのでした。
私がこの曲を次回作に取り込もうと企んだのは、2002年の秋のことだった。
TINGARAにとって4作目となるアルバム『みるやかなや』の楽曲制作に取り掛かった頃。
1998年にスタートしたTINGARAは、元々、アルバムを3枚出したら終りにしようと話していたユニットでした。それは「どんなに優れたアーティストでも、完璧なアルバムは3枚がせいぜい」というこだわりがサウンドプロデューサーのひでおさんの中にあって、メンバーの意見が一致したからでした。
TINGARAは沖縄民謡のカバーアルバムでスタートしたので、それも当然だった。
2001年にビクターからメジャーデビューをしたあとも、その考えは変わらなかった。
だから、4作目の制作に取り掛かる前には、メンバー間に少々の緊張が走っていました。
「あれ?俺たち終わるんじゃなかったっけ?」みたいな。(笑)
だけどメンバーにも継続の欲が出ていて、私にもまだやり残したことがありました。
メンバーの中で音楽だけを生業としているのは私だけだったので、私はここで看板を張った以上、今後の活動にも繋げていけなければ意味がなかったのです。
TINGARAはメンバーもスタッフもとても魅力的な人たちだった。
だけど私以外には、ひとりも沖縄出身者がいない。
それなのに沖縄ばかりに向かっていて「沖縄に遊びに行きたい」が理由の人がほとんどだった。
プロモーションも沖縄に行き、沖縄で売れたがるのです・・・
申し訳ないけど、むしろ沖縄から発信して本土で商売させていただきたい。(笑)
それが当時の私の琉球人としてのホンネだったように思います。
いつか必ず故郷に誇れるアルバムを創る。
それも、沖縄を出て本土を拠点として本土の人たちと組んでいるのだから、
沖縄を売りにはしたくない。
私から滲み出る琉球魂で感じられるアルバムを。
タイトルは『みるやかなや』でいきたい。
かつて海を渡り、世界へと生きる場を求めて旅だった琉球のパイオニアたち。
その生き様を描くようなアルバムにしたかった。
それまでは1曲づつ仕上げていくことに必死だったTINGARA。
しかし次回作ではトータルのテーマ性が欲しかった。
さて、どんな構成にするか・・・
そこで目に止まったのは「翌年の8月に火星が6万年ぶりに大接近する」という記事でした。
2003年8月27日の火星大接近です。
そうだ!惑星でいこう。
当時TINGARAは、夏にアルバムをリリースするのがお決まりになっていて、その年も7月リリースで決まっていました。
それまでアルバムの収録曲数をTINGARAは10曲で通してきていたので、ならばその10曲を占星術を元にした10惑星に当てはめて表現しよう。ダブルミーニング的な、10のシーンを。
なんとも安直な感じではありますが(^^ヾ、このアイディアは、星空をテーマとしたTINGARAのコンセプトにも、宇宙や占星術が大好きな私の思考にも、そして2003年というタイミングにも見事にマッチしている、と思ったのです。
私はなぜか「2003年は宇宙元年になる!」と直感していたのでした。
つづく・・・